【読了記録】悪党/薬丸岳(どうすれば赦せるのか)
どうも、さっさです。
薬丸岳の小説『悪党』を読みました。
ネタバレ無しの忘備録です。
青字をタップすると、Amazonの商品ページに行けます。
読んだきっかけ
Twitterで他の人の読了ツイートきっかけで『虚夢』を読みました。
そして薬丸岳の社会派ミステリーにすっかりハマりました。
今では制覇したい作家の1人です。
次は何を読もうかと、Amazonで検索。
『悪党』のストーリーを見てピンと来ました。
罪、復讐、罰についての考察が捗りますね。
小説はKindle派です。端末はKindle Oasisを使っています。
あらすじと感想
自らが犯した不祥事で職を追われた元警官の佐伯修一は、今は埼玉の探偵事務所に籍を置いている。決して繁盛しているとはいえない事務所に、ある老夫婦から人捜しの依頼が舞い込んだ。自分たちの息子を殺し、少年院を出て社会復帰しているはずの男を捜し出し、さらに、その男を赦すべきか、赦すべきでないのか、その判断材料を見つけて欲しいというのだ。この仕事に後ろ向きだった佐伯は、所長の命令で渋々調査を開始する。実は、佐伯自身も、かつて身内を殺された犯罪被害者遺族なのだった…。『天使のナイフ』で江戸川乱歩賞を受賞した著者が、犯罪者と犯罪被害者遺族の心の葛藤を正面から切り込んで描いた、衝撃と感動の傑作社会派ミステリ。
「BOOK」データベースより
連作短編形式で、7章プラス、プロローグとエピローグという構成。
前半では、佐伯が勤める探偵事務所にさまざまな人探しの依頼があります。依頼人は犯罪被害者遺族。探し人はかつての犯罪加害者。
捜索の途中で佐伯も自身のことを振り返って、姉を殺した連中のその後を追いかけ始めます。
老夫婦の話も興味深いし、佐伯の内側に渦巻く姉殺しの犯人への憎悪もなかなかのもの。
加えて犯罪者家族への風当たりの強さも相当なものです。
2023年2月にニュースになった、回転寿司スシローの醤油差しを舐めた岐阜県の高校生。本人にもかなりの粛清があると思いますが、こんな子にしてしまったお母さんも辛い。これと似ています。
読みながら東野圭吾の小説『手紙』を思い出しました。兄が殺人犯だからと、仕事も恋愛もうまくいかない弟。
犯罪がニュースになると、つい被害者やその家族の方に同情がいってしまいます。加害者は決まって悪役で、「なんでそんなことしたん?」となりがちだし、加害者の親は一体どういう教育をしているんだ、と批判されるもの。
でも、その後の加害者の家族の辛さは、なかなかスポットライトが当たらない。そこをうまく描いたのが『手紙』でした。
江戸時代なら敵討ちが許されていたので、関係者がいなくなるまで憎しみ合って終了という感じでした。
でも現代では敵討ちが禁止されています。
憎い相手をやっつけることができないのです。
人を殺しておいて、ちょっと服役しただけで、何事もなかったかのように暮らしているかつての犯罪者。僕なら赦せません。
赦せるか赦せないか。
老夫婦からの依頼をこなした佐伯が向かう先とは。
終盤での佐伯の言動は、なかなか印象的でした。
東野圭吾の小説『さまよう刃』『殺人の門』に通じるところもあります。「やっぱりそうなるよね」という感じ。
まとめ
いかがでしたか?
今回は薬丸岳の小説『悪党』の読了記録でした。
この本を読みながら、どうしたら加害者を赦せるのか、と考えました。
でも僕には無理でした。赦すことはできません。
憎しみというのは、簡単におさめられるものではありませんね。
自分の内側にあるものを強引にかき混ぜられたような。
でもそれが心地良い。
そんな読後感でした。
それでは、また。