虚夢/薬丸缶(精神異常者による犯罪を考えさせられる。)
どうも、さっさです。
薬丸缶の小説『虚夢』を読みました。
あらすじと感想をネタバレ無しで書き残します。
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表紙は雪に包まれた白銀の世界。北海道です。
読んだきっかけ
Twitterでフォローしている人の読了ツイートを見てビビッときました。その人は「今月はヤ行で始まる作家の小説を読む」なんて、月によってテーマを決めて読書をしています。
面白いです。新刊や流行に左右されないのは強い。
あらすじと感想
通り魔事件によって娘の命は奪われた。だが犯人は「心神喪失」状態であったとされ、罪に問われることはなかった。心に大きな傷を負った男は妻とも別れてしまう。そして事件から4年、元妻から突然、「あの男」を街で見たと告げられる。娘を殺めた男に近づこうとするが……。人の心の脆さと強さに踏み込んだ感動作。
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あらすじのダイジェスト↓
通り魔として公園でナイフを振り回し、12人を殺傷した藤崎。ところが、「心神喪失」状態とされ、罪に問われませんでした。
やりきれないのは、3歳の娘を殺された両親。夫は三木、妻は佐和子。佐和子は娘をかばって藤崎に背中を刺されました。離婚後、三木は酒に溺れる日々で、佐和子は再婚するも、藤崎がまた襲ってくるのではないか、とヒステリー気味の生活をしています。
物語は佐和子が再婚した時の夫・坂上、藤崎がふらっと入ったススキノのお店で出会ったユキ(この人もなかなかの訳あり)が加わり、視点がいろんな人物の間を移動しながら進んでいきます。
坂上は佐和子の普通ではない様子をあちこちに相談したり。
ユキは藤崎を自宅に招き入れ、優しい一面に幸せを感じるも、謎の「黒い霧」に怯えて性格が豹変してしまう藤崎に戸惑う一面も。
そして、終盤でいよいよ復讐の時がやってくるのです。
ここから感想↓
精神異常者の犯罪について考えさせられます。
刑法39条で「心神喪失者は罪に問わない」とあり、殺人犯が実は精神異常者で、被害者遺族の願い虚しく、軽い罪で済んでしまったなんてことは、現実世界でもよくあります。
う〜ん……僕にも娘がいましてね。この小説みたいに通り魔に襲われて殺され、しかも犯人が軽い罪で済む、なんてことになったら、かなりやけになってしまうと思います。
小説では藤崎が「黒い霧」という幻覚に怯え、幻覚のせいで犯行に及んだとされています。苦しみながら親しくなったユキの首を絞める場面もあります。
藤崎にも藤崎なりの事情があるようです。
でも!でもですよ。娘を殺された怒りが収まることはありませんよね。
こうやって、他者の言動について理解できないことを「了解不能」というそうです。
年齢性別に応じたものや、身体能力や知能の差による態度や言動の違い。これは理解できる部分があると思います。
でも精神異常者の態度や言動はなかなか理解されない。作中の精神科医たちも、「まあ薬を飲んで様子を見ましょう」とか「本人には病識(病気という意識)がないものですよ」という感じ。こうすれば完璧に治るなんてことはないんでしょうね。
だからと言って、殺人犯が軽い罪でいいものかどうか。
こんな感じで、「小説自体の面白さがありつつ、我が身を振り返る」と、僕の理想とする読書体験ができました。
いい本に出会えました。
まとめ
いかがでしたか?
今回は薬丸缶の小説『虚夢』の読了記録でした。
精神異常者による犯罪。本人の苦しみと遺族の苦悩。
おそらく、しばらく考えても解決できることではありません。でも考えることが大事だと思います。
Kindle版だと396円。お得過ぎます。
興味があったら、ぜひ読んでみてください。そして、感想を共有しましょう。
それでは、また。