【読了記録】雪の花/秋吉理香子(4つの短編集。どれも面白い。)
どうも、さっさです。
秋吉理香子の小説『雪の花』を読みました。
第3回ヤフー・ジャパン文学賞を受賞した作品です。
文庫本の発行日が2009年9月9日。
読了日は2022年4月28日。
2009年は僕が塾で教室長になり、結婚もしました。20代塾講師にとってターニングポイントとなる年でした。その頃はまだ小説をむさぼり読むほどではなかったので、この本の存在は知らなかったですね。
Amazonの商品ページはこちらから↓
読んだきっかけ
『絶対正義』『サイレンス』と2つ読んで、どちらも超絶面白かったので、秋吉理香子も全部いったろうと思いました。どちらも「クセがすごい女」が登場して、まあ忘れられないんですよね。
秋吉理香子は印象に残る女を書かせたら天下一品。勝手にそういうイメージがついてしまいました。案の定、この本でも女性たちが印象に残りましたね。
誰もがムカつく女登場。『絶対正義』の読了記録はこちらから↓
『サイレンス』の読了記録はこちらから↓
あらすじと感想
列車に飛び乗り、上京して四十年。何もかもが夢のようにうまくいっていたバブル期の輝かしい栄光は過去のものとなり、経済的な困窮に陥った夫婦が、死を覚悟して帰郷する。―人気のない故郷。真っ白な雪に埋もれた母校でふたりが見つけた希望とは?バブル崩壊、不景気、リストラ、経費削減など、社会の大きな流れの中で人生を左右される人々の苦悩の日々と切なさを描き、第三回ヤフー・ジャパン文学賞を受賞し、ドラマ化された表題作を収録。離婚で離ればなれになった親子の絆や仮面夫婦の成れの果てを綴った作品など、涙を誘うヒューマン・ノベル四篇。
「BOOK」データベースより
表題作「雪の花」は最後に登場します。
上のあらすじを知って読み始めると、違う作品が続くので、ちょっと拍子抜け。でも、3つとも面白いので、結果オーライ。
以下、それぞれの話の振り返り。ネタバレ無し。
・「女神の微笑」
離婚後の男が、たまに会える娘と、昔行ったテーマパークで待ち合わせ。元妻は既に再婚しています。男にとって、娘に会える時間は至福のひと時。ところがせっかく待ち合わせしたものの、そこは…
僕にも娘がいまして、大事に思う気持ちはよく分かります。娘が大きくなるにつれて、流行が分からずに話が噛み合わなくなってくる父親。でもなんとか話はしたい。そんな父親の奮闘にグッときます。
・「秘蹟」
老夫婦の話。ある日、キリスト教徒である妻が失踪してしまいます。旦那にはその理由に何の検討もつきません。妻が通っていた教会に行って、手がかりを探します。考えてみたら、旦那には妻のことが名前以外、何も分かっていないのでした…
長年連れ添う夫婦。幸せそうに思えますが、実は同じ家で一緒に寝食を共にしているだけ。大した会話もせずに、妻の趣味・趣向が何も分からないことを反省する旦那。こんなふうにはなりたくないですね。
・たねあかし
ある女性が、元交際相手に出した手紙。物語の全てがこの手紙の文面で続きます。その男性への溢れる思いから始まった文章は、思わぬ展開に…
これはすごい。
手紙の文面だけでストーリーが完結しました。おしとやかに見えて恋愛には貪欲。こういう女、どの会社にもいそうです。
・雪の花
バブル期で儲けた夫婦が、その後の不景気で路頭に迷う。40歳の僕には、バブル期の頃はまだ幼かったので、実感がわきません。ですので、落ちぶれてしまった夫婦の人間模様を読みました。確かに最後には希望が湧いてきます。ビジネスではちょっと儲けたからって、銀行に乗せられてうかつに拡大しないことですね。