【読書記録】黄龍の耳/大沢在昌
あらすじと感想
希郎は父の死により、自分が千二百年以上昔、中華の玄宗皇帝から伝わる“黄龍の力”を受け継いだことを知らされる。耳の封印を解くと、金と女性、厄介事までとてつもない勢いで寄ってくるという。イタリアの修道院を出て、ラスヴェガスで運試しをした後、日本に戻った希郎。女性を武器にして、権力者を操る巳那一族と対決することを心に誓う。漫画化され大ヒットした名作、新装版で復活!
Amazon商品ページより
面白かった。
「新宿鮫」シリーズ読破後に読みましたが、大沢在昌はこんな世界も書けるのか。
まるでレベル上げのいらないドラクエをやっているかのようでした。
主人公の希郎(きろう)は、耳の封印を解くと金運と恋愛運がMAXに。金運と恋愛運なんて大半の人間の夢ですよね。
いいなあ、という思いと、もし自分がこの力を持っていたらどんなことに使うかな、と考えながら読みました。家のローンを早く返したい。
元々、漫画化するのが前提の本作。しかもヤングジャンプということで、中高生以降にバチっとハマる感じですね。
どうせ耳の力で乗り切るんだろう、と先は読めてしまうものの、どんなふうに力が出てくるのかというのは楽しみなところ。ここはマンガ「ラッキーマン」と同じシステム。
ずっと力を解放していればいいのに、なんて野暮なことを思ってしまいますが、ここぞ、という時のためにとっておく感じがまたいい。
男性目線だと、お金と女に困ることはないという状況です。一見願ってもない状況なんですが、やはりほどほどがいいですね。こういう小説を読むとそう思わされます。
ラスベガスで一攫千金の場面があるのですが、あまりに勝ち過ぎると次は命の危険が待っています。
日本人はお金の話をすること自体がいやらしい、という考え方がありますからね。やはり暮らしていける程度のお金がキープできていればいいと思います。
場所もいいですね。イタリアの修道院から始まって、ロンドン、ラスベガス、日本へと移っていきます。なんか冒険している感じが出ています。
中国の玄宗皇帝絡みで耳の力が伝わるとされています。この玄宗ってのが、女性関係が原因で没落してしまった男。高校の世界史に登場する人物です。やはり男は女に狂わされてしまうのか。
僕も高校生の時、かわいすぎる彼女がいまして、ハンドボールがやりたくてその高校を選んだはずなのに、ハンドがどうでもいい、ずっとこの人と一緒にいたい、と考えた時期がありました。それと似ているのかなあ。
なんかそんな感じで、読んでいると自分のお金と恋愛のことが浮かんできて、ちょいちょい考えさせられるんですよね。42歳にもなると希望も絶望もなく仕事しかない日々で、なかなか新鮮です。
希郎はどうせいい思いをするんだろうな、と羨ましがりながら、自分も実は結構いい思いをしてきたじゃないか、なんて振り返りが発生します。
この本は売らずにとっておこう。娘と息子が大きくなったら読みたくなるかもしれない。
既に亡くなった父親の本棚にも文庫本がびっしりありました。僕が読んだのはエロシーンが楽しみな島耕作だけ。今思えば、もっと他にも読んでおけばよかったと後悔。
他にどんな本が並んでいたのかが分からないのが悩ましいところ。もしかしたら僕と同じくミステリーや警察小説が好きで、松本清張がいくつも並んでいたのかも。
話がそれました。でもこんな感じの回想が生まれるのはいい本である証拠。
未読の人には超絶オススメです。
それでは、また。
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