【読了記録】ジェノサイド/高野和明(新人類が現れたら、どうすればいいんだ?)
どうも、さっさです。
高野和明の小説『ジェノサイド』を読みました。
ネタバレ無しの忘備録です。
読んだきっかけ
日経新聞の「ベストセラーの裏側」という読書コーナー。新聞は読書コーナーと本の広告がたまに役に立ちます。
読んでいるだけでグイグイ引き込まれて、すぐに買いました。
結果大正解でしたね。
あらすじ
急死したはずの父親から送られてきた一通のメール。それがすべての発端だった。創薬化学を専攻する大学院生・古賀研人は、その不可解な遺書を手掛かりに、隠されていた私設実験室に辿り着く。ウイルス学者だった父は、そこで何を研究しようとしていたのか。同じ頃、特殊部隊出身の傭兵、ジョナサン・イエーガーは、難病に冒された息子の治療費を稼ぐため、ある極秘の依頼を引き受けた。暗殺任務と思しき詳細不明の作戦。事前に明かされたのは、「人類全体に奉仕する仕事」ということだけだった。イエーガーは暗殺チームの一員となり、戦争状態にあるコンゴのジャングル地帯に潜入するが…。
「BOOK」データベースより
元グリーンベレーのジョナサン・イエーガーはイラクで民間軍事会社に勤める傭兵。
今は難病を抱える息子の命を救うために、大金を稼ぐ必要がありました。
リスボンで治療を受けている息子のところに行くため休暇をとる予定だったイエーガーの元に奇妙な任務が舞い込みます。
イエーガーは暗殺のような汚い仕事であろうと推察しますが、余命1ヶ月となった息子のために、イエーガーは承諾します。
イエーガーたちに与えられた任務は、第一次アフリカ大戦が現在も行われているコンゴ民主共和国に密かに潜入し、危険な病に取り憑かれたピグミー族の住人たちを駆除すること。そして「これまで見たこともない生物」(新人類)に遭遇した場合はそれを排除することでした。
実はその任務がアメリカ合衆国大統領・バーンズの命令で「人類絶滅の危機」を防ぐために発動された作戦だとは、イエーガーは知るよしもありませんでした。
一方、日本では大学院生の古賀研人が父親の葬儀を行っていました。
ウィルス学の研究者で大学教授の父誠治に反発していた研人は、創薬化学の研究室に籠もり、実験に明け暮れていました。
研人は葬儀に参列した父の知人で新聞記者の菅井から「ハイズマン・レポート」という耳慣れない言葉を聞きます。それは30年前にアメリカ大統領の命令で作成された報告書、誠治が生前に菅井に尋ねていたものでした。
葬儀を終え、研究室に戻った研人は自分のPCに届いた1通の電子メールに凍り付きます。それは亡くなった誠治から送られたもので、死亡してから5日も経ってから配信されたものだったからです。
自分の死を予見していたかのような記述と、父と子の間でしか知り得ない秘密。胸騒ぎを感じた研人は実家の父の書斎にあった本の間から誠治の残した1枚のメモとキャッシュカードを発見します。
1.本とメモは処分しろ。
2.黒いノートパソコンを保管し誰にも渡さないこと。
3.好きに使って良いという500万円入ったとされるキャッシュカード。
4.町田市にあるアパートの住所と鍵の在処。
5.すべては他言無用。携帯電話や電子メールはすべて盗聴されていると思い用心しろという警告。
まるで被害妄想に取り憑かれたかのような最後の文章。
研人は混乱したまま町田のアパートを訪れます。父が不倫相手との逢瀬を重ねた隠れ家と思っていた彼の意に反し、その部屋はさながら「小さな研究室」といった様子でした。
「自分の研究を引き継いでGPCRの作動薬を創薬しろ。危険なら投げ出して構わない。期日は2月28日」
残された父のメッセージ、そしてパソコンに入った『GIFT』という極めて高度な創薬ソフト。そうした事実を知った研人の周囲はにわかに慌ただしくなります。
研人に接触してくる謎の女性坂井友里。友人に紹介された韓国人留学生李正勲から聞いた「このソフトを作った人は相当優秀だ」という言葉。
そして真夜中に鳴り出した携帯電話から聞こえた「ニゲロ」という電子音声の警告。
その直後、警察の捜査が自分の身に及び、研人はあわやというところで逃げ出します。次第に真実味を帯びていく父の言葉に、研人は自分が重要な使命を与えられ、日本政府をも巻き込んだ重大な事態に巻き込まれたのだと痛感します。
まったく繋がらないはずの2人の物語が、アフリカ奥地と東京郊外のアパートで同時進行していきます。イエーガーと研人、2人の主人公はやがてそれぞれに想像を絶する驚愕の事実に遭遇することになるのです。
コンゴでイェーガーが出会ったのは、ズバリ新人類。作中ではヌースと呼ばれます。まだ幼いのに複数の言語を操れたり、天候を予測できたりと、明らかに今の人間よりハイスペック。アメリカ政府はヌースの存在を知って、抹殺しようとしたのです。
ヌースが助かれば、研人の新薬の完成は早まり、イェーガーの息子は助かります。果たして、結末はどうなるのか?というのが、この本の本筋です。
評価
☆☆☆☆☆(星5)
すごい。
新人類の登場と、抹殺しようと動くアメリカ政府。その企みから逃れようとしつつ、難病の新薬を開発する試み。
アメリカ政府の抹殺の試みは理解できます。なぜなら、これまで人類は新人類の登場と共に、それまで生きてきた人たちが滅ぼされてきた歴史を歩んでいるからです。
猿人は原人に滅ぼされました。原人は新人(我々の直接の先祖とされています)に滅ぼされました。
では、もし新人類が登場した場合、我々現生人類はどうなるのか…?
新型コロナウイルスも時期によって変化していて、従来のワクチンでは通用しない状況です。人間もいつか進化する可能性はゼロとは言い切れません。
小説として抜群の面白さを発揮する本作。
同時に、現実世界と繋がっている話だと思うと、恐ろしさが込み上げてきます。
まとめ
いかがでしたか?
今回は高野和明の小説『ジェノサイド』の読了記録でした。
実際に目の前に新人類が現れたらどうするのか?
考えさせられる作品です。
なかなk電子化されないのが残念。
まあ、これくらい面白い小説であれば、紙の本で置いておいてもいいですけどね。
それでは、また。