【読了記録】ジゼル/秋吉理香子(殺人とバレエと。)
どうも、さっさです。
秋吉理香子の小説『ジゼル』を読みました。
ネタバレ無しで振り返ります。
発行 2017年9月26日
文庫化 2020年10月6日
読了 2022年6月9日
読んだきっかけ
『絶対正義』、『サイレンス』と読んで、秋吉ワールドにハマりました。
以来、秋吉作品を全部読む計画を進めています。
あらすじと感想
東京グランド・バレエ団の創立15周年記念公演の演目が「ジゼル」に決定し、如月花音は準主役のミルタに抜擢される。このバレエ団では15年前、ジゼル役のプリマ・姫宮真由美が代役の紅林嶺衣奈を襲った末に死亡する事件が起き、「ジゼル」はタブーとなっていた。そんな矢先、目撃された真由美の亡霊。公演の準備を進める中、配役の変更で団員の間には不協和音が生じ、不可解な事件が相次いで…。これはすべて真由美の“呪い”なのか?『ジゼル』の封印を解いた時、悲劇的な死を遂げたプリマの想いが甦る―!!
「BOOK」データベースより
クラシックバレエを扱った小説は、東野圭吾『眠りの森』以来ですね。加賀恭一郎シリーズで、加賀がバレリーナに恋をするんです。女にうっとりする加賀を見られるのは、シリーズの中でもこれだけです。
さて、『ジゼル』に話を戻します。
Amazonのレビューでは、バレエ経験者にとっては浅い内容というものがありますね。
でも素人の僕には十分濃厚。
クラシックバレエがいかに厳しい世界かは、これを読んでいるだけでよく分かります。
役を取られたという嫉妬心。体型やメンタルの厳しい自己管理。プロになるためにはたくさんのお金と覚悟が必要です。
絵画などの芸術は、描き上げた時点で完成ですが、バレエには完成がありません。瞬間の永遠性を求めて、常に高みを目指さなければならないのです。
トウ・シューズは1832年、スウェーデンのマリー・タリオーニが世界で初めてつま先立ちで踊ったとされています。
もっと高く舞いたい、と願った結果、つま先で立つということに行き着いたのです。
ミルタに抜擢された花音。死人であるミルタは空中を自在に飛べる設定なので、どのステップも軽やかさが特徴。いかに重力から解放されているように見せるかがポイント。
15年前に真由美が死んだ事件の真相。
現代に蘇った真由美の亡霊の正体と、それに続く不可解な事件。
メインのストーリーはこれらを軸にして進みます。
進みながら、バレエの厳しい世界が垣間見られるのが、この小説の特徴。
高校時代のハンドボール部を思い出します。ひたすら走らされて、他の人を蹴落としてでもレギュラーになって試合に出たいと願った日々。仲間なのにライバルでもある同級生たち。複雑な心境でしたね。そんな頃と重なって、花音たちに感情移入しまくりでした。
新たな飲み物発見、ルートビール
練習を終えた花音たちが、レストランで食事をしているときに登場。
ビールに似た甘めの炭酸飲料で、アメリカでは一般的らしいです。
以前ロサンゼルスにバレエ留学していた蘭丸という人物が飲んでハマったということです。
コーラにハッカが入っているんですね。
小説を読んでいると、こういう新発見がたまにあります。
これが面白いんですよね。世の中にはまだまだ知らないことがあるんだな、と。
それでは、また。