護られなかった者たちへ/中山七里 序盤のあらすじと感想
どうも、さっさです。
今回は中山七里の小説「護られなかった者たちへ」読了記録。
読み終えたのは2021年9月27日。
なるほど確かに社会派ミステリーでした。
読んだきっかけ
2021年10月の映画公開です。
佐藤健や阿部寛がメインキャスト。
読み終えてから思いましたが、この2人はピッタリですね。誰の役かはすぐに分かりました。
今回初めて中山作品に触れました。
もともと中山七里作品は、Twitterの読了投稿を複数見ていて、気にはなっていたんですよね。
この人、小学生の時にホームズとルパンを読み尽くし、中学生の時にアガサ・クリスティーやエラリー・クイーンを読み尽くして、高校生の時に執筆活動をしていました。
まるで絵に描いたような文学少年だったんですね。
小説家としてのデビューは48歳。
単純な遅咲きということではなく、会社員として忙しく働いていて、再び執筆するまでに20年空いたということです。
連載を多く抱えるようになって、会社を辞めて作家1本でやっていくことにしたそうです。
序盤のあらすじ
誰もが口を揃えて「人格者」だと言う、仙台市の福祉保険事務所課長・三雲忠勝が、身体を拘束された餓死死体で発見された。
「BOOK」データベースより
怨恨が理由とは考えにくく、物盗りによる犯行の可能性も低く、捜査は暗礁に乗り上げる。
しかし事件の数日前に、一人の模範囚が出所しており、男は過去に起きたある出来事の関係者を追っているらしい。そして第二の被害者が発見され――。
社会福祉と人々の正義が交差したときに、あなたの脳裏に浮かぶ人物は誰か。
仙台市の福祉保険事務所に勤める三雲忠勝。
ガムテープでぐるぐる巻きにされて、餓死状態で発見されます。
周囲の人の話だと、三雲は絵に描いたような善人。人から恨みを買うはずがない、と誰もが口を揃えていいます。
財布の中身はそのままで、物取りの線もありません。
少したって、同じく餓死状態で発見される第2の被害者。
手口が同じであることから、同じ犯人だろうと推測されます。
捜査を進める笘篠という刑事。
震災の時に愛する妻と息子を津波で亡くしていました。
2人が写る写真を眺めながら、自宅で1人、冷凍チャーハンを食べます。
一方、少し前に8年間の服役を経て、刑務所から出所した利根勝久という者がいました。この男、ある目的があって行動しています。
犯人は誰なのか?
なぜ2人は餓死させられていたのか?
なぜ福祉保険事務所の職員が殺されなければならなかったのか?
出所した男は何をしようとしているのか?
感想
なるほど確かに社会派ミステリー。
舞台は東日本大震災後の仙台市。
復興・社会福祉・予算・厚生労働省といったところがキーワードになるお話です。
10代の頃の僕がこの作品を読んだら、個人が切り捨てられることへの怒りで荒れ狂っていたと思います。
もしかしたら、自分が体制を変えてやるんだ、と正義感に燃えることで、その後の仕事選びに影響して、塾講師になっていなかったかもしれません(笑)
大人の事情というものが多少分かるようになった39歳の今、心境は複雑です。
全体最適を目指すしかない組織。
限られた予算。
上司やさらに上の組織の方針の中で、仕方なく従うしかない者たち。
市民の中で得をする者と犠牲になる者。
その境界線は正しいのか。
仕事を通じての社会貢献・他者貢献とは一体何なのか。
そもそも正解とは何か。
こういったことは、働いている人なら、誰もが1度は考えることではないでしょうか。
抽象的で申し訳ないですが、これ以上はネタバレになってしまうので避けます。読んだ人がいたら、ぜひ共有したいですね。
まとめ
いかがでしたか?
今回は中山七里の「護られなかった者たちへ」の読了記録でした。
この作品はかなり序盤からネタバレ要素を含むので、他の人との共有が難しいです。
震災や社会福祉のことを考えさせられるだけではなく、ミステリーとしても良い展開をする作品です。
ですので、ぜひオススメしたいのですが、仮に勧めるとしても「とにかく面白いから読んでみて」と国語力がない子どもみたいなことしか言えません(笑)
社会福祉学部の学生、福祉関連の職員であれば、職業観を鍛える良い機会にきっとなります。
それでは、また。