【読了記録】望み/雫井脩介(息子は加害者か、被害者か)
どうも、さっさです。
雫井脩介の小説『望み』を読みました。
ネタバレ無しで振り返ります。
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読んだきっかけ
映画「検察側の罪人」を観たのをきっかけに、雫井ワールドにハマりました。以来、機会を見つけては、雫井脩介の小説を意識して読むようにしています。
当時は妻が二宮和也のファンだから、と映画館に一緒に行っただけでしたが、今となっては感謝ですね。
心の奥底に迫る、重厚な犯罪小説が雫井脩介の持ち味。
しかも出身が愛知県小牧市と、僕の一宮市から近いのも特徴的です。
このサイトには、雫井作品の読了記録が他にもいくつかあります。よかったらご覧ください。
あらすじと感想
東京のベッドタウンに住み、建築デザインの仕事をしている石川一登と校正者の妻・貴代美。二人は、高一の息子・規士と中三の娘・雅と共に、家族四人平和に暮らしていた。規士が高校生になって初めての夏休み。友人も増え、無断外泊も度々するようになったが、二人は特別な注意を払っていなかった。そんな夏休みが明けた9月のある週末。規士が2日経っても家に帰ってこず、連絡すら途絶えてしまった。心配していた矢先、息子の友人が複数人に殺害されたニュースを見て、二人は胸騒ぎを覚える。行方不明は三人。そのうち犯人だと見られる逃走中の少年は二人。息子は犯人なのか、それとも…。息子の無実を望む一登と、犯人であっても生きていて欲しいと望む貴代美。揺れ動く父と母の思い―。
「BOOK」データベースより
石川家の長男・規士(ただし)が家に帰って来なくなってしまいました。
心配していた矢先、規士の友人が遺体となって発見されるニュースが飛び込んできます。
規士は数日前に、顔を腫らして帰ってきたことがありました。
また、ナイフを購入していました。
「何に使うんだ?」「別に」と言い合ってナイフを取り上げたのを、父・一登は思い出します。
果たして、規士は加害者なのか。それとも事件とは無関係なのか。無関係だとしたら、どうして帰って来ないのか。
頼むから事件とは無関係でいてくれ。
家族の想いをよそに、ネットや報道では、規士を加害者として扱っていました。
そして、家の玄関に投げつけられる生卵。表札にペンキを塗られるイタズラ。毎日のように報道陣が殺到するようにもなっていました。
憶測だけで加熱するネットや報道とともに、両親は仕事関係で、妹は学習塾・進学面でそれぞれつらい目に遭うようになってしまいます。
この場面が読んでいてこちらも苦しくなります。
もし自分が同じ状況になってしまったら、きっと仕事も家庭もうまくいかなくなると思います。
そんなことを考えながらページをめくりにめくった先に、やっとたどり着いた事件の真相。
気がつけば一気読みでした。
ただ、犯罪者とされる人物の家族がつらい目に遭う、というくだりは、東野圭吾『手紙』のリプレイのよう。
まあ、でもこの手の話は何回読んでも考えさせられるものがありますね。
まとめ
いかがでしたか?
今回は雫井脩介の小説『望み』の読了記録でした。
雫井脩介は犯罪に関連する人間心理、人間関係の描き方が抜群。
どの小説も、まるで自分事のように感じさせられます。
今作では、父・一登に自分を重ねずにはいられませんでした。
もし自分の子供が犯罪に巻き込まれてしまったら?あるいは犯罪者になってしまったら?
子を持つ親であれば、誰もがしっかり考えさせられるはずです。
胸の奥底をえぐられるような、この感じ。
未読で気になった人は、ぜひ読んでほしいですね。
ちなみに2020年に映画化されています。知りませんでした。
父・一登の役は堤真一。悲壮感漂う雰囲気は「容疑者Xの献身」と似ているところがありますね。間違いなく良作と思います。
それでは、また。