中山七里

【読了記録】ネメシスの使者/中山七里(刑罰の是非とは)

さっさ

どうも、さっさです。
中山七里の小説『ネメシスの使者』を読みました。
ネタバレ無しの忘備録です。

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読んだきっかけ

AmazonでKindle Unlimitedを見ていたら出てきました。

元々、中山七里の社会派ミステリーは好きで、迷うことなくポチりました。

ただの事件解決の話に終わらず、その時のテーマについて深く心が揺さぶられます。たいてい白黒ハッキリさせづらいものです。

今作だと裁判特化の話。死刑や懲役といった刑罰の是非について、作中のキャラクターたちと一緒にこちらも考えさせられます。

護られなかった者たちへ』も面白かった。ただの事件解決に終わらず、高齢者福祉についてすごく考えさせられるものでした。未読であればオススメ。映画にもなりましたね。

この小説も僕はKindle版。Kindle Oasisで読みました。

あらすじと感想

死刑判決を免れた殺人犯たちの家族が、次々に殺される事件が起きた―。現場に残されていたのは、ギリシア神話に登場する「義憤」の女神を意味する「ネメシス」という血文字。事件は遺族による加害者家族への復讐か、それとも司法に対する挑戦か?司法システムと死刑制度を正面から取り上げた社会派ミステリ。

「BOOK」データベースより

テミスの剣』の渡瀬刑事が登場(読んでない…汗)。鋭い洞察力で事件の真相を追いかけます。淡々と真相に迫っていく感じは、『切り裂きジャックの告白』に出てくる犬養刑事と似ています。

中山七里作品でも定評のある「岬洋介」シリーズの岬洋介の父親も検事として登場。渡瀬とは古い知り合いのようです。法曹界を捨てて音楽界に転身した息子へのボヤキは笑わせます。

さよならドビュッシー』と『おやすみラフマニノフ』は読んだので、「おー!」と思いましたね。同じ作家の小説を何冊か読んでいると、こういうのが面白い。

作中で犠牲になったのは、死刑判決を免れた殺人犯たちの家族。どちらの現場にも血文字で「ネメシス」と書かれていました。

復讐か。司法制度への挑戦か。

疑われるのは当時の被害者遺族。そして、当時裁判を担当し、いずれも死刑判決を出さなかった判事。

「犯人は誰なのか?」という謎を追いかけるのが基本的な流れ。でも、それだけでは終わらないのが、中山七里。

渡瀬や岬検事、被害者遺族やマスコミの言動から「司法システム・死刑制度の是非」を何回も考えさせられます。

被害者遺族からしたら、被告人には死刑が妥当に決まっている。いや、死刑でも生ぬるい!という感情になりがち。

被告人側は、被害者遺族に手紙を書いたり、裁判で猛省ぶりをアピール。その様子から、死刑まではいかなくても…と思わされるところが出てきます。

なんだか、お金を借りた方は忘れていて、貸した方は覚えている、というのと似ていますね。双方に温度差があって、いい着地点が見つからないのです。

江戸時代までは「仇討(あだう)ち」「かたき討ち」が認められていました。やられたらやり返す、というのが当たり前の時代があったのです。以降、司法制度が整っていきます。

殺人による懲役刑期は15年、無期懲役は30〜40年(長ければ70年)が定番だそうです。事件の内容により、数年のプラスマイナスがあります。

死刑も重いですが、懲役も重い。だって、生きたまま長い間「やってしまった」と苦しむことになるのですから。

作中では、長期間の刑務所暮らしで日常への復帰が難しいレベルまで精神がやられてしまった人の話が出てきます。僕も以前の職場で精神をやられそうになったことがありますが、一度壊れた心の回復ってなかなか難しいです。

果たして適正な刑罰とは。

どっか法学部がある大学で、この小説を使ってレポートの課題があったり、講義の中でディベートしていたりしてもいいな。やってそうだな。

まとめ

いかがでしたか?

今回は中山七里の小説『ネメシスの使者』の読了記録でした。

裁判に関わる人は、「正解はなくとも、納得解を」という感じで毎日激務をこなしているんでしょうね。難しいけど、どこかに着地させなければならない。

司法制度の是非を問う名作。

興味があれば超絶オススメです。

それでは、また。

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ABOUT ME
さっさ
さっさ
塾講師。読書家。
1982年生まれ。愛知県一宮市の塾講師。読書量は年間100冊以上。勉強のやり方、自己啓発や心理学、ビジネスや哲学関連は読み尽くし、現在は小説が中心。読了記録を書き残しています。参考になればうれしいです。
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