「変身」[東野圭吾](脳片になっても生きてる…死とは何なんだろう?)
どうも、さっさです。
今回は東野圭吾の小説「変身」のあらすじと感想。
文庫本は1994年6月15日発行。
あらすじ
平凡な青年・成瀬純一をある日突然、不慮の事故が襲った。そして彼の頭に世界初の脳移植手術が行われた。それまで画家を夢見て、優しい恋人を愛していた純一は、手術後徐々に性格が変わっていくのを、自分ではどうしょうもない。自己崩壊の恐怖に駆られた純一は自分に移植された脳の持主(ドナー)の正体を突き止める。
裏表紙より
純一は無口で大人しく、人見知りするタイプ。絵が得意。
しかし、刑事の倉田が純一に抱いた印象は、快活な印象で会話にも淀みがありません。
恋人の葉村恵は、純一の絵を見て「以前と少しタッチが変わったのではないか」と言います。
脳移植をしたことで、純一に変化が…
以前は楽しかった恵とのデートが、今は無駄な時間に思えてしまう純一。
可愛く思っていたソバカスが、なければいいのにと思ってしまいます。
会社の人たちはなんて無能なんだと、スパナかハンマーで殴りたい気持ちを抑えられません。
職場での孤立化が進んでいきます。
ドナーは関谷時雄という人物。しかし…
純一は正体を隠して関谷の父親に会いにいきますが、どうも親子だという感覚がありません。
もしかして、ドナーは別人?
純一は不動産屋に押し入った強盗に打たれました。
強盗の名は京極瞬介。
純一は京極の双子の妹の家を訪問。兄弟特有のピピっとくるものがあって、ドナーは京極瞬介だと確信。
なぜ大学の研究室は、ドナーの正体を偽っていたのでしょうか。
純一の絵のタッチは、明らかに変わりました。
絵よりも京極が持っていた音楽的な才能が現れてきました。
性格がどんどん暴力的になって、ついには殺人にまで及んでしまいます。
変わりゆく純一。この先どうなってしまうのか…
感想
・他人の脳に支配されていく恐怖。
画家志望だった純一が、音楽家志望だった京極瞬介に人格を支配されていきます。
純一は頭の中で、京極に負けないように頑張りますが、及ばず殺人に至ります。
自分が自分ではなくなっていくのを自覚する恐怖が、じわじわきますね。
アルバムや住所録、かつて笑ったレンタルビデオを見て、必死に自分を取り戻そうとする純一には、「負けるな、がんばれ」と声援を送りたくなります。
・純一を最後まで見捨てない女、葉村恵。
純一の人格が変わって「出ていけ」と言われても、恵は最後まで「神様、ジュンを助けてください」と祈り続けます。
脳が京極メインの純一は、恵のソバカスが気に入らなくて、それが恵にも伝わってしまいます。
恵の存在が、終盤には純一を救います。
純一はいい女に愛されていました。
・警察があまり出てきません。
いつもの東野作品では、警察の動きとともに事件解決に近づいていく印象です。
今回の警察は、純一にちょいと話を聞きに来る倉田刑事のみ。
この作品のメインは純一の変わりゆく人格と、その周囲の人間模様ということですね。
読み終わった後には「死とは何か?」を、本を持ったまましばし考えさせられました。