【読了記録】月夜行路/秋吉理香子
どうも、さっさです。
秋吉理香子の小説『月夜行路』を読みました。
ネタバレ無しで振り返ります。
あらすじと感想
専業主婦の涼子は、冷え切った夫との関係や言うことをきかない二人の子どもとの生活に、疲労感と閉塞感を覚えていた。45歳の誕生日を明日に控えた深夜、書籍編集者の夫に女性から一本の電話がかかってきた。「小説家の重原宗助先生からの仕事が入った」と家を出てしまう夫。我慢の限界に達した涼子は、家を飛び出す……。涼子が向かった先は、夫の愛人ホステスが勤めるクラブの入ったビル。1階のBAR「マーキームーン」に入ると、文学好きの美しいママが話しかけてくる。性別は男だというママは、涼子の悩みや素性を鋭い洞察力と推理力で言い当ててしまう。涼子がママに夫の愚痴を話すと、唯一の「良い思い出」である大学時代の彼氏・カズトにもう一度会おうと、旅に出ることになる。
Amazonの商品ページより
まず設定が僕には秀逸。
40代で2人の子持ちという夫婦。若い頃のときめきは間違いなく薄れています。
そんな時に夫に浮気の疑惑が。
妻としてはもうやり切れない気持ちで、ほぼパジャマのまま飛び出し、BARに向かったことでしょう。
こんな序盤で、僕みたいな同じ境遇の読者はしばし手を止めて自分たち夫婦の状況を振り返ってしまうのではないでしょうか。
僕ら夫婦も40代で子育てに追われているような状況で、2人の時間はなかなか取れません。僕は取りたいと思っています。感謝の気持ちもめちゃくちゃありますが、直接伝えるのもなんか恥ずかしく、、、って、同じ状況の人たくさんいるんじゃないですか?
さて、ママと大阪へ旅に出ることになった涼子。
大阪では文学の聖地を巡りながら、ママの鋭い推理でいろんな事件を解決していきます。
カズトに早く会いたいのですが、事件が邪魔をしてなかなか会えません。
これらのくだりが必要かどうかは微妙。
カズトに会うことが目的だと、あらすじでは書いてあるので、不要とも言えます。読んでいて焦ったい感じはしました。
でも、ママの文学絡みの圧倒的な推理力は一読の価値あり。
今までで見たことのない手法です。
太宰治とか夏目漱石とか。
文学史の有名人たちの小説に出てくるセリフとか、小説に出てくる大阪の場所とか。こういったものを駆使して、事件が解決していくのです。
別に文学史に詳しくなくても、ママが説明してくれるから大丈夫です。
読んでいると僕もそれらを読んでみたくなるし、大阪に行ってみたい、そんな気持ちにさせられます。
秋吉理香子が早稲田大学第一文学部卒業、ということで大正から昭和にかけての文学の引き出しがあるんでしょうかね。
とまあ、そんなこんなでカズトに会う前にいくつかの事件があるわけですが、ママの見事な振る舞いで、本筋からすると寄り道ですが、決して無駄ではないとも言えます。
カズトに会うだけならこの小説が100ページくらいで終わってしまうような気もします。
ついにカズトとの対面となる終盤。
涼子には驚きの事実が怒涛のように押し寄せ、物語は一気に結末を迎えます。
もう僕も驚きすぎて、読後にはしばし呆然としてしまいました。
イヤミスではないですよ。素直に読んで良かったと思えます。
同時に自分の家族への想いを再確認できました。
この小説の前に読んだのが『無人島ロワイヤル』だったからかな。サバイバルものからの家族愛ミステリーという流れが良かったのかもしれません。
M -1でもありますよね、順番の妙というものが。
まとめ
いかがでしたか?
今回は秋吉理香子の小説『月夜行路』の読了記録でした。
実は秋吉理香子の小説は全部読んでいます。
それでも好きな作家として公言していないのは『息子のボーイフレンド』というBL絡みの小説があるからです。ゲイもレズもトランスジェンダーも僕にはダメです。
今作でも元男が手術をして女性の体になったBARママが登場します。その手術のくだりとか、術後のケアのことも描かれているのですが、僕には微妙でした。それでも文学絡みの名推理がお見事なので、小説のキャラとしてはOKという感じ。
『絶対正義』や『サイレンス』は名作なんですけどね。
気になったらぜひ読んでみてください。
それでは、また。
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