【読了記録】おやすみラフマニノフ/中山七里(2000年9月の東海豪雨が思い出される)
どうも、さっさです。
中山七里の小説『おやすみラフマニノフ』を読みました。
ネタバレ無しで振り返ります。
発行 2011年9月1日
読了 2022年5月
読んだきっかけ
中山七里は『護られなかった者たちへ』→『さよならドビュッシー』→『おやすみラフマニノフ』とたどってきました。
『さよなら〜』から始まる岬洋介シリーズは名古屋が舞台になっています。僕は愛知県一宮市に住んでいて名古屋が近いんです。高校が名古屋でもありました。そこが大きいですね。
小説の地理が分かりやすいのは良い。
ということで、シリーズ2作目であるこの本にたどり着きました。
あらすじと感想
秋の演奏会を控え、第一ヴァイオリンの主席奏者である音大生の晶は初音とともに、プロへの切符をつかむために練習に励んでいた。しかし完全密室で保管されていた、時価2億円のチェロ、ストラディバリウスが盗まれる。脅迫状も届き、晶は心身ともに追い詰められていく。さらに彼らの身に不可解な事件が次々と起こり…。メンバーたちは、果たして無事に演奏会を迎えることができるのか。ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」がコンサート・ホールに響くとき、驚愕の真実が明かされる。
「BOOK」データベースより
正月番組でAかBの高級品を当てる番組でおなじみの楽器、ストラディバリウス。これが盗まれてしまいます。
ちなみにストラディバリウスがなぜ高級なのか?
ストラディバリという希少な木で作られていて、その音色が唯一無二なのです。他の木に比べて頑丈で、薄く削っても壊れにくい。しかも加工には技術が必要。量が少なく、職人の手でしか作ることができないから高いところがあります。
音大生である主人公たちは、様々に追い詰められながらコンサートに向けて頑張って練習していきます。
今回特筆すべきは、2000年9月に東海地方を襲った集中豪雨の描写があること。
当時、僕は高校3年生で名古屋の高校にいました。確か金曜日で、翌日が文化祭だからみんな残って準備をしていました。19時になって帰ろうと下駄箱に向かったら、すでにくるぶしあたりまで水たまりになっていました。靴は履いたものの、玄関のたった15cmの段差がすでに浸水。でもその時は「ひどい雨だな」くらいにしか思っていませんでした。
坂を降りると、腰まで水に浸かりました。道の真ん中におじいさんがいました。黄色い帽子と緑のシャパシャパの服。いつもは横断歩道を渡る小学生を見守っているのでしょう。そのおじいさんが、「ここは危ないから」と、教えてくれました。雨がすごすぎてマンホールの蓋が取れてしまっているのです。
何とか最寄りの名鉄の駅まで着くと、大勢の人が電車を待っていました。ところが、いつも電車の到着時刻が書いてある掲示板が真っ黒。後で聞けば、あちこちの川が氾濫して危険だから、電車が来なかったのです。
僕は引き返して、高校に戻ることにしました。翌々日には一宮市の自宅に戻ることができました。結局文化祭は延期になりました。
この作品では、実際に浸水がひどかった枇杷島町でのシーンがあります。
悲壮感に打ちひしがれる町民たちに向けて、楽器を演奏して勇気づける場面なのですが、これがまあ名シーン。僕みたいに雨でひどい目にあった経験があるなら、ジンとくるものがあるはずです。
メインのミステリーは前作に続いて、岬洋介が見事に解決。
本音を言うと、話の流れとしては東野圭吾作品ほどグッと来ませんでした(汗)。
司法崩れのピアニスト・岬洋介は素敵なキャラなんですけど、ハイスペック過ぎてなんか人間味が無いんですよね。
このシリーズはここで一旦やめておこうと思います。
それでは、また。