【読了記録】猫のお告げは樹の下で/青山美智子(心がほっこり。7つのやさしい短編集。)
どうも、さっさです。
青山美智子の小説『猫のお告げは樹の下で』を読みました。
発行 2020年6月4日
読了 2022年5月
読んだきっかけ
2022年本屋大賞第2位になった『赤と青のエスキース』きっかけで、青山ワールドに没入。
この年の本屋大賞候補作品は6つ読みました。(そのうち2つは、時間を返せと言いたいくらいのハズレで、6つで読むのをやめました。本屋大賞は出版社と限られた書店員の間だけで盛り上げているイベント。次回からはもう騙されないぞ。)
大賞は『赤と青のエスキース』が取ったと思いました。
それくらいの衝撃があったのです。
青山作品の特徴は「あたたかさ」にあります。
ミステリーのように誰かの死を追いかけるでもなく、SFのように宇宙や近未来の科学技術も出てきません。ファンタジーのような異世界も出てきません。
現代のこの地球で、日常世界のどこにでも起こりそうな、でもちょっと不思議で感動のある話。
ミステリーばかりを読んできた僕にとって、青山美智子が綴るあたたかい文章は、とても心地良かったのです。
あらすじと感想
ふと立ち寄った神社で出会った、お尻に星のマークがついた猫―ミクジの葉っぱの「お告げ」が導く、7つのやさしい物語。失恋した相手を忘れたい美容師、中学生の娘と仲良くなりたい父親、なりたいものが分からない就活生、夢を諦めるべきか迷う主婦…。なんでもない言葉が「お告げ」だと気づいたとき、思い悩む人たちの世界はガラッと変わっていく―。あなたの心もあたたかくなる連作短編集。
「BOOK」データベースより
一枚目「ニシムキ」
失恋した相手を忘れたい美容師・ミハル。
同じお店の憧れの先輩、佐久間さんに「飲みに行きませんか」と誘うも、佐久間には婚約者がいることが分かってしまいます。
陸上部だったミハルは、走って忘れようとします。
ふと立ち寄った神社で、お尻に星のマークがついた猫・ミクジを発見。
ミクジが樹に前足をチョンと当てると、「ニシムキ」と書かれた葉っぱが落ちてきました。
その文字は他の人には見えないようです。
そこで生まれて50年の宮司さん。彼ですらミクジには1度も会ったことがなく、お告げをもらえたなんて運がいい、と言います。
果たして、「ニシムキ」が示す意味とは……。
こんな感じで7つのあたたかいお話が展開されます。
それぞれの話が微妙につながっているのもポイント。
猫のお告げによって、人生が変わっていく人たちをぜひ見てあげて欲しいです。
僕のお気に入りは、六枚目「スペース」。
35歳の主婦・千咲。
子育てに追われ、何かと忙しい毎日。
千咲は漫画家になる夢があったのですが、あきらめてしまいました。
絵を描いている時が楽しいはずなのに、主婦としての生活を理由に動き出せない自分がいたのです。でも、もう漫画を描いている時間も気力もない。
昔使っていた漫画を描くためのペン軸が家にありました。ゴミ箱には捨てられず、神社で処分してもらおうとします。
ところが、ペン軸は神社では処分できないと、断られてしまいます。
そこで出会った猫のミクジ。
ミクジがいつものように樹に前足を当てると、「スペース」と書かれた葉っぱが落ちてきたのでした。
「スペース」の意味は分かりませんが、とりあえず描いてみようと、千咲は行動を起こすのです。
この話、好きだなあ。
かつての夢を、いろいろ理由をつけてあきらめてしまっている人は、多いのではないでしょうか。
僕も自分自身を振り返って、生きているうちにやりたいことをやらなくちゃ、となんだかパワーがもらえます。
こんないい本がKindle版ならたった624円で買えるなんて破格すぎます。
さて、Wikiに載っている順でいくと、次の作品は『鎌倉うずまき案内所』。
おー、迷い人が華麗に案内される構図が目に浮かびますね。
(って、『猫のお告げは樹の下で』と同じ流れ?でもいいや。どうせ面白くて感動するから。)
それでは、また。