【読了記録】ガラスの殺意/秋吉理香子(殺人と介護と。)
どうも、さっさです。
秋吉理香子の小説『ガラスの殺意』を読みました。
発行 2018年8月23日
読了 2022年6月9日
読んだきっかけ
『絶対正義』、『サイレンス』と読んで、秋吉ワールドにハマりました。
以来、秋吉作品を全部読む計画を進めています。
これで8冊読了です。
あらすじと感想
20年前に起きた通り魔事件の犯人が刺殺された。警察に「殺した」と通報したのは、その通り魔に愛する両親を殺された柏原麻由子。だが、麻由子は当時現場から逃げる途中で交通事故に遭い、脳に障害を負っていた。警察の調べに対し、麻由子による通り魔殺害の記憶は定かでない。はたして復讐は成し遂げられたのか―?
「BOOK」データベースより
病院にいる麻由子。
聴取に来た警察には自分のことを大学受験を控えた高校3年生と言いますが、実際は41歳。
20年前、銀座で通り魔に襲われて両親が殺害されたことを覚えていません。
それどころか、今話している警察の2人のことも途中から忘れてしまっていました。
麻由子の記憶は12分しか持たないのです。
夫は柏原光治。麻由子をはねた車を運転していた人物。麻由子の記憶障害のことは分かった上で、献身的な介護をしている状態です。
一方、病院に聴取に訪れた森ケ崎署の桐谷優香。
母親が若年性アルツハイマー型認知症で「あけぼの苑」という施設に預けています。
夜中に徘徊したり、食事に毒が入っていると言って食べなかったり、下着をつけたまま排泄したりしています。
元々は教師をしていて、道徳と礼儀を重んじる指導が特徴のしっかり者でした。そんな人が61歳の時に突然おかしくなってしまったのです。
優香は母と暮らすことに疲れてしまって、施設に預けることが正解だと思っています。
たまに施設に訪れて母の様子を見ながら、麻由子の件の捜査を進めていきます。
いやあ、これ、麻由子の復讐劇の真相よりも、介護案件2つの方が気になって、ちょいちょい読む手が止まりましたね。
妻が記憶障害。母親が認知症。いずれも毎日家で向き合っていたら、まあ介護者は高確率で精神的におかしくなってしまいます。
メインのストーリーの結末には、「えっ、そうなの?!」というどんでん返しが待っています。
でも、どんでん返しよりも「介護」についての印象が大きく、考えさせられるものになりました。
僕の母は65歳。最近の話では心身の衰えを自覚していて、メガネは毎年替えていると言っていました。
いずれ体が動かなくなり、トイレも入浴も介護が必要となった時。
変わらずに母を愛せるのだろうか。
今は答えを出したくないような、考えたくないような、そんな気持ちです。
愛情と面倒臭さの間の着地点をどうするか。
介護に悩む人なら絶対に考えることです。
僕はこれからですが、経験者の皆さんはどうやって解決しているのでしょうか。
いつもは秋吉ワールドに翻弄されて良い心地で終わるのですが、今回はなんだか重要なテーマを突きつけられたような気がします。
例えば介護が関係ない若い人の多くには麻由子の復讐劇の真相解明が面白いと思います。
僕みたいなアラフォーは「介護」のことを考えさせられます。
そんな小説でした。
それでは、また。