エッセー

【エッセー】のし上がったところで・・・

woman sitting on rock doing heart hand gesture
さっさ

アメリカでマルコムXの暗殺事件に新展開。有罪判決を受けた2人が無罪になりました。事件に関するドキュメント番組がきっかけとなって、検察当局が再捜査に乗り出したのです。

マルコムXとは?
アメリカの黒人運動の指導者です。独自の組織を設立して<黒人革命>を提唱しましたが、途中で暗殺されました。アメリカではマルコムの日(誕生日である5月19日)が決められたり、その活躍が映画になったりしました。

黒人勢力が大きくなるのは、白人中心のアメリカ政府にとって都合が悪いのでしょうかね。「なぜ黒人が憎いか?」という質問に、「強姦された者に、俺が憎いか?と聞かれるのと同じだ」とマルコムは答えています。黒人と白人は本能レベルでの反発があったのかもしれません。暗殺にはFBIが絡んでいたとも言われていますが、真相は不明です。

「有名になる」というのも考えものです。

マルコムは晩年、ずっと命を狙われていました。ひと時も落ち着ける時がなかったはずです。そして、あるスピーチの途中で、3人の男によって銃を15発撃たれてしまいます。

有名になる。権力を手に入れる。お金持ちになる。

誰もが1度は夢見ることです。でも、実際どうなんでしょう。

もし有名になったら、普通の生活ができなくなってしまいます。近所で買い物もできません。発言の1つ1つはマスコミに取り上げられて、知らない人たちから良し悪しを判断されます。

権力を手にした人、例えば会社では社長をはじめとした経営陣は、現場の従業員から毎日ブツブツ言われています。真面目に従っているように見える人でも、内心では現状の不満が大きく渦巻いているかもしれません。

もしお金持ちになったら、今度は不安な毎日を過ごすことになります。最初は散財して、一見幸せなように思えます。車に服に身の回りのちょっとしたものがすべて高級品になります。でもある程度気が済んだら今度は「このお金がなくなったらどうしよう」と毎日不安になりながらの生活が始まります。高級品の最新作を買い続ける財力をキープしなければならない、と新たなプレッシャーが生まれます。お金持ちを理想に働いても、自分の健康や家族を犠牲にしなければいけません。

手にしたものを失うより、最初から無い方がいい。

小説「老人と海」で有名なヘミングウェイ。彼はノーベル文学賞を取りました。作家として十分なところにたどり着きました。しかし晩年はうつ病になり、年齢と共に健康を損なっていくショックから、ショットガンで自殺したのです。

ヘミングウェイでいうノーベル文学賞のように、何か大きなものを手に入れると、自分の価値をキープい続けなければいけません。あるいは更なる向上を目指さなければなりません。

何か大きなものを手に入れたいと頑張ってきたはずなのに、手に入れた後も大変ってどういうことだ…。

作家でいうなら、何も賞は取らずに自分が書きたいものを、何も気にせずに書き続けること。ひょっとしたらこれがいちばん幸せなのかもしれません。迂闊に賞を取ってしまうと、その後はずっとプレッシャーに悩まされます。

会社でも優秀な実績を取ってしまうと、その後はずっと忙しくなります。あれもこれも仕事が回ってきます。役職は1つくらいは変わるかもしれませんが、大したことではありません。給料もたいして変わりません。「忙しい人ほど仕事が回ってくる」は本当ですよ。これも程々がいいですね。

じゃあ、あなたは何も頑張らないつもり?いやいやそうではなくて…。

「自分にできることを無理なく1つずつやっていこう」これが僕の理想。だって、自分の力以上のことはできないんですから。その結果手に入れるもの(おそらく大半は小さなもの)で大満足。

知らないことは、詳しい人に聞けばいいんです。自分が知らないという事実で落ち込む必要はありません。なんでも既に詳しい人がどこかにいるのですから。自分が学ぶべきことは知識そのものよりも、詳しい人に教えてもらいやすくするための会話術の方かもしれません。その方が、ひょっとして時間的には知識の習得が早くなるかもしれませんよ。

いつの間にか参加させられていた、「名誉と権力とお金を追い求めるレース」。僕はずいぶん前にリタイアしました。それらを手にした人たちを実際に見てきました。その後の忙しさやプレッシャー、自分の健康や家族を犠牲にしている様子。僕にはとても耐えられそうにありません。

だから今日も、自分にできることを1つずつやっていくだけです。

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ABOUT ME
さっさ
さっさ
塾講師。読書家。
1982年生まれ。愛知県一宮市の塾講師。読書量は年間100冊以上。勉強のやり方、自己啓発や心理学、ビジネスや哲学関連は読み尽くし、現在は小説が中心。読了記録を書き残しています。参考になればうれしいです。
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