【読了記録】ブラックボックス/砂川文次(芥川賞受賞!自転車配達人は今日も遠くへ!)
どうも、さっさです。
砂川文次の小説「ブラックボックス」を読みました。
ネタバレ無しで振り返ります。
以前「芥川賞」を勘違いしていました。
過去に受賞した「火花」や「推し、燃ゆ」を読んでも、何にも面白くなかったのです。
それもそのはず、芥川賞は純文学に送られる賞。
文字の並びを堪能し、主人公を取り巻く世界に浸るもの。
それが純文学です。調べて分かった時には、上記2作品の作者、又吉さんと宇佐美さんに申し訳ない気持ちが湧いてきました。
普段ミステリーやSFなど、小説で感動や驚きを経験している人には、退屈になってしまいます。
「何がどうなるわけではない」
「文字の並びや世界観を堪能することが目的」
そう分かった上で読むのがオススメです。
あらすじ
ずっと遠くに行きたかった。
今も行きたいと思っている。自分の中の怒りの暴発を、なぜ止められないのだろう。
自衛隊を辞め、いまは自転車便メッセンジャーの仕事に就いているサクマは、都内を今日もひた走る。昼間走る街並みやそこかしこにあるであろう倉庫やオフィス、夜の生活の営み、どれもこれもが明け透けに見えているようで見えない。張りぼての向こう側に広がっているかもしれない実相に触れることはできない。
「BOOK」データベースより
精神的に不安定な自転車配達人・サクマの物語です。
感想
・すぐキレるサクマ。分かるような、分からないような。
主人公のサクマには、耐えるとか、柔軟な対応ができません。
不満と不安がすぐ怒りに現れて、周囲を傷つけます。
職場の人、恋人、刑務所の同じ房の人。誰ともうまくいきません。
自転車で走っている時だけ、不安から逃れることができる。
そんな描写が印象的。
キレたいけどキレられない人には、作中でサクマがキレまくってくれているので、スッキリするかもしれません。
・自転車便という職業から自分の人生も振り返る。
自転車便は体力的にずっとできるものではありません。
この先どうしよう、と考えるサクマ。ただでさえ職を転々としています。妊娠した恋人もいます。
僕は塾講師ですが、サクマと似たような思考になることがあります。
「60歳の塾講師なんていないよな・・・この先どうしよう。人生100年時代とか言われてるし・・・」
「この先、仮に出世できて経営側に回っても面白いとは限らないよな。現場の従業員には毎日悪口言われるに決まってるし・・・」
そんなことをアレコレ考えてしまいます。結論は出ません。
読んでいると、サクマの思考が自分と重なる人もいるのではないでしょうか。
・刑務所で自分のことを考え続けるサクマ。こちらも読む手が止まる。
刑務所は何もない、何もできない環境です。壁やドアを見て、自分の人生を振り返るくらいしかやることがありません。
最近では、スキマ時間があればスマホを見て、何かやることはないか、と次々に暇を潰すことにいつの間にか一生懸命になっている生活の人が多いのではないでしょうか。
読む手を止めて、ふとこちらも考えさせられます。
本を読みながら、自分のことを考える時間が持てました。
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芥川賞の作品は一般的な小説と比べて短いのが特徴です。読書の習慣はないけど、興味はある、という人は、芥川賞の作品を読むところからスタートしてみてはいかがでしょうか。