【読書記録】ペスト/カミュ
コロナ禍で気になって読んだ人も、気にはなっているけどまだ読んでいない人も、たくさんいるのではないでしょうか。
僕は知り合いが感染したのをきっかけに読みました。(以前買って、ずっと家にはあったのですが、フランス語の日本語訳が回りくどくて、その時は読むのをやめてしまいました汗)
ウイルスが蔓延した時の人間模様は、興味深い。
結論から言うと、コロナ禍での日本の様子と同じですよ。
序盤のあらすじ
194x年、アルジェリアのオランという町。
医師ベルナール・リウーは診療室を出たところで、ネズミの死体を発見。
それから街にはネズミの死体が大量発生。
ついには1日で8000匹が回収されます。
そして、リウーが勤める病院の門番の死。
16名、24名、28名、32名と、日に日に死亡者数は増えていきます。
明らかに「ペスト」。リウーは思い切って知事に電話をします。
患者が出た家は閉鎖して消毒。近親者は予防隔離をして、措置を強化することにしました。
しかし、人々の生活は変わりません。
電車は相変わらず満員。
夜になると映画館の前には行列ができます。
リウーは、知事が差し出した、パリ(オランはフランスの植民地)から届いた公電を眺めていました。
「ペストチクタルコトヲセンゲンシ シヲヘイサセヨ」(ペスト逐たることを宣言し、市を閉鎖せよ)
その後の大まかなあらすじ
4月に市を閉鎖してから、翌年2月に門が開くまでの話になります。
死亡者数は増え続け、人々の言動は絶望的なものに変わっていきます。
リウー自身が途中で心労のピークに達するところは、読むこちらも苦しくなります。
4時間睡眠で、残りの20時間は患者に隔離の宣告をし続けるだけ。
血清が完成していないので、目の前の人の治療ができません。
リウーはただひたすら患者に「ペストである」と認定して、隔離の指示をするだけの毎日。
しかも終わりは見えません。
そんな中でコタールという人物は、市外から内緒で仕入れた物資を売りさばくことで財をなしていました。
こんな感じで、ペストがあるから人生が好転するという、状況も描かれています。
感想
・人々の様子はコロナ禍の現代と同じ。
政府を批判したり、まさか自分はかからないだろうと思っていたり、自分だけは特別な事情があるから市の外にいる身内や恋人に合わせてくれ、と県庁に多くの陳情者が訪れたり…
こういった様子は、現代のコロナ禍での様子と似ています。
週の死亡者が302名と新聞で記事になっても、人々はいまいちピンと来ていません。
人はみんな、自分自身の、個人的な感情を優先するのです。序盤はまだ政府に罪を着せる余裕があります。後に人々は追放感、別離感に苦しみ、記憶や愛などの感情がなくなっていきます。
・客観的な記録という文体が、ペストの恐ろしさを引き立てています。
市は閉鎖され、手紙を出すことも禁止。
人々には事実上2つの苦しみがありました。
1 我々自身の苦しみ
2 息子、妻、恋人など、そこにいない者の身の上に想像される苦しみ
映画館には新しい映画のフィルムが届かなくなって、同じ映画ばかりが上映されます。にもかかわらず、毎週映画館は盛況でした。
こんな感じの記述が続きます。
客観的な記録、無感動な描写がこの作品の特徴です。
想像や感情に訴えるというよりは、頭脳に訴えるという感じで、ペストの恐ろしさは読者次第。
人々のセリフもほぼセリフのみ。そこに何らかの感情や考察が描かれることはありません。
「実際、リウー、ずいぶん疲れることだよ、ペスト患者であることは。しかし、ペスト患者になるまいとすることは、まだもっと疲れることだ」
リウーの友人タルーの言葉
まとめ
いかがでしたか?
1日1時間確保できたら、1週間で読めます。
ただ、フランス語の日本語訳が回りくどくて、なかなか頭に入ってこないかもしれません。
僕はノートにストーリーの流れや気になったところをメモしながら読みました。
メモの量はB5サイズのノートで14ページになりました。
ウイルス蔓延時の人々の様子は、コロナ禍においてかなり参考になります。
未読で気になる人は、ぜひ読んで欲しいです。
それでは、また。