【読了記録】スタッフロール/深緑野分(ハリウッドでもがいた女性造形師にワクワク)
どうも、さっさです。
深緑野分の小説『スタッフロール』を読みました。
ネタバレ無しで振り返ります。
発行 2022年4月13日
読了 2022年7月14日
読んだきっかけ
2022年、第167回直木賞候補の作品を全部読む試みをしています。これで4冊目となりました。
本屋大賞の時は途中でリタイヤしましたが、直木賞は全部読めそうです。
あらすじと感想
戦後ハリウッドの映画界でもがき、爪痕を残そうと奮闘した特殊造形師・マチルダ。
脚光を浴びながら、自身の才能を信じ切れず葛藤する、現代ロンドンのCGクリエイター・ヴィヴィアン。
CGの嵐が吹き荒れるなか、映画に魅せられた2人の魂が、時を越えて共鳴する。特殊効果の“魔法”によって、“夢”を生み出すことに人生を賭した2人の女性クリエイター。その愛と真実の物語。
Amazon商品ページより
この小説では、マチルダの人生を追体験します。
戦後ハリウッドなので、まだCGはなく、最初は粘土なんかでクリーチャー(怪獣とかモンスターのようなもの)を作っていました。
女性なので、仕事がなかったり、いい作品を作っても認められなかったりします。
また、特殊造形が必要なSFやホラー映画は人気がない時期で、宇宙人やモンスターが登場する映画が賞の候補になることは間違ってもないのでした。
それが悔しくて歯がゆくて、思わずマチルダを応援している自分がいます。
時が経ってCGを見た時の衝撃はマチルダには大きいものでした。
コンピューターでワンタッチで作れてしまうクリーチャーはダメ。やっぱり粘土なんかで手間暇かけて作っとものでないと。マチルダは新しい技術を受け入れられません。
まるでiPhone普及時2008年以降、ガラケーで良くない?VSスマホ神、の対決のよう。いつの時代も新しい技術が登場すると、積極派と消極派に分かれて議論がされるものです。
ある時、マチルダは気付きます。
みんなにウケる作品を作るのではなくて、自分が作りたい作品を作ること。
こう考えたマチルダは、映画界から姿を消します。
ここで、物語は2017年に移り、主人公が代わって後半へ続いていくのです。
終盤にかけてマチルダのくだりと繋がるのが、この小説の特徴です。
僕には前半のマチルダ編がピークでした。
マチルダの思考が、会社員としての自分への強烈な問いかけに思えたからです。
お客さんや上司にウケることが仕事なのか?
自分が本当にやりたいこととは違うのに、我慢し過ぎではないか?
僕は悩んだ結果、16年勤めた塾の会社を退職しました。(昨日が最終勤務日でした。今日から有休消化期間です。違う塾に転職することは決まっています。)
こんな状況から、僕にはマチルダの気持ちがよく分かりました。
まとめ
今回は深緑野分の小説『スタッフロール』の読了記録でした。
働くことに不安や悩みがある人には、マチルダと自分が重なるところがあると思います。
「トイストーリー」など以降の3DCG映画が当たり前になっている世代にとっては、粘土でモンスターを作るマチルダに「古っ!」と戸惑うかもしれませんね。後半の方が身近で面白く感じると思います。
そもそもアメリカが舞台の小説がレア。
読んで損はない1冊と思います。
それでは、また。