【読了記録】締め殺しの樹/河﨑秋子(これは「おしん」のリプレイ。)
どうも、さっさです。
河﨑秋子の小説『締め殺しの樹』を50%まで読みました。
その振り返りを記録します。
発行 2021年12月1日
読了 2022年7月14日
読んだきっかけ
2022年、第167回直木賞候補作品を全部読む試みをしています。
これで3作目となりました。
あらすじと感想
あなたは、哀れでも可哀相でもないんですよ。
北海道根室で生まれ、新潟で育ったミサエは、両親の顔を知らない。昭和十年、十歳で元屯田兵の吉岡家に引き取られる形で根室に舞い戻ったミサエは、ボロ雑巾のようにこき使われた。しかし、吉岡家出入りの薬売りに見込まれて、札幌の薬問屋で奉公することに。戦後、ミサエは保健婦となり、再び根室に暮らすようになる。幸せとは言えない結婚生活、そして長女の幼すぎる死。数々の苦難に遭いながら、ひっそりと生を全うしたミサエは幸せだったのか。養子に出された息子の雄介は、ミサエの人生の道のりを辿ろうとする。数々の文学賞に輝いた俊英が圧倒的筆力で贈る、北の女の一代記。
Amazon商品ページより
序盤は「クレヨンしんちゃん」のミサエに引っ張られるのを、何とかこらえるところからスタート。
吉岡家の権力をひけらかしたいだけの、理不尽夫婦の元に引き取られたミサエの奮闘記がしばらく続きます。
吉岡家のタカ乃というおばさんが、まあムカつきます。
根室の寒さも加わって不幸な境遇の中で、ミサエが健気に育ち、保健婦として立派にやっていくところに、爽快感があるのが特徴です。
あらすじにもある通り、ミサエの長女・道子が自殺するところ、これが50%くらいなんですが、ここまで読んで僕は本を閉じました。
結末がどうなろうと、興味がなくなってしまいました。
この手の話は、NHKドラマの「おしん」で経験済みだからです。
苦難と共に生を全うしたミサエは幸せだったのか?
令和の現代ではほぼあり得ない環境なので、判断ができません。
「こんな辛い時代が日本にもあったのか。食べ物で困らない平和ボケした今の自分の心に火が付いた」
読んだ人の中には、こんな感想を持つ人もいると思います。
そういう人には、きっといい小説になるでしょう。
でも令和の今は、逃げたければ逃げられる時代なんです。
苦痛にいつまでも耐える必要はないのです。
遠ざけたい人は遠ざけることができるのです。
昭和の女児が身売りされることが事実だったとしても、令和の今ではなかなか共感できません。
理不尽な目に遭った少女の奮闘記。
これがこの小説のメインストーリーです。
僕はもういいかな…。
僕はこの手の話からは、生きるパワーがもらえません。
限界を突破しているのにも関わらず、逃げずに頑張ることに美学を感じないからです。
「孫氏の兵法」にもありますが、勝てる見込みがないならそもそも戦わないことも立派な戦い方なのです。
人生は短いので、ある程度の知識や分別が身についているのなら、苦難の道は出来るだけ避けるのが吉。
こんな価値観なものですから、この小説は最後まで読めませんでした。
小説を最後まで読まない、ということは極めて稀です。
でも、この本は間違いなく「おしん」のリプレイ。
であれば、もう結構。
そんな気持ちです。