【読了記録】女人入眼/永井紗耶子(新たな視点で描かれる人間模様。)
どうも、さっさです。
永井紗耶子の小説『女人入眼』を読みました。
ネタバレ無しで振り返ります。
発行 2022年4月10日
読了 2022年7月13日
読んだきっかけ
2022年、第167回直木賞候補作を全部読もうと思って、読んでいます。
これで2作目となりました。
あらすじと感想
『商う狼』で新田次郎賞をはじめ数多くの文学賞を受賞。
大注目の作家が紡ぐ、知られざる鎌倉時代を生きた女性たちの物語。「大仏は眼が入って初めて仏となるのです。男たちが戦で彫り上げた国の形に、玉眼を入れるのは、女人であろうと私は思うのですよ」
Amazon商品ページより
建久六年(1195年)。京の六条殿に仕える女房・周子は、宮中掌握の一手として、源頼朝と北条政子の娘・大姫を入内させるという命を受けて鎌倉へ入る。気鬱の病を抱え、繊細な心を持つ大姫と、大きな野望を抱き、それゆえ娘への強い圧力となる政子。二人のことを探る周子が辿り着いた、母子の間に横たわる悲しき過去とは――。
「鎌倉幕府最大の失策」と呼ばれる謎多き事件・大姫入内。
その背後には、政治の実権をめぐる女たちの戦いと、わかり合えない母と娘の物語があった。
大姫を鎌倉から京都へ連れて帰るように命じられた周子。
でも、大姫は口数が少なく、体調を崩しがちでなかなか話すことができません。
大姫の母親である北条政子は、その一言で人の命を奪えるほどの権力の持ち主。政子の機嫌を損なうことは許されません。バックに政子がいることを考えると、周子は大姫との会話もいちいち神経を使わなければいけません。
この小説は、権力者たちの中で周子という女がどのように生き残るか。
その人間模様が描かれます。
当時は京都の天皇や上皇を中心とする勢力と、鎌倉の源頼朝と北条家と中心とする勢力が二分していました。
一概にどちらが強いとは言い切れません。
公家と武家が睨み合っているような構図です。
公家には権力が、武家には武力があります。
やり方は違えど、日本を支配したい、という思いはどちらも同じです。
この小説は、身近な職場や学校にこの人間模様を当てはめてみると、面白い。
権力が強い者と財を持つ者。
手っ取り早く出世するには、このどちらかの者に引っ張り上げてもらうのが最短ルートです。
これが「なるほど」と思える人には、とても参考なる小説と思います。
周子の振る舞いから、例えば自分のこれからの職場での振る舞いを見直すきっかけになります。
序盤は人物把握のために、エネルギーを結構使います。当時の「京都VS鎌倉」という構図も歴史から離れている人には、把握に時間がかかるかもしれません。
作中では簡潔な説明がされています。そこさえサクッと飲み込めれば、あとは周子の奮闘を見守るだけです。
司馬遼太郎の『義経』を読んでいると、より分かりやすいと思います。(中2国語で平家物語をやるのですが、その副読本に指定されていたので、僕は以前読みました。)
まとめ
今回は永井紗耶子の小説『女人入眼』の読了記録でした。
自分の力ではどうにもならないものに左右されながら、ベストな道を選択する。
いつの時代も、人間模様は同じです。
歴史小説はこれが学べるから面白い。
人生、結局は富と権力を持つものと、それにあやかろうとするものの話で盛り上がるんです。自分が当事者か傍観者かの違いがあるだけです。
鎌倉時代の女性たちの生き様を見ながら、我が身を振り返る。
これが『女人入眼』の読み方。
鎌倉時代の女性の話、というレア度。
これが『女人入眼』の魅力です。
それでは、また。